も来て、いろいろの面白い話をしてくれた。主人の去った後は読書。絶え間なしに流れてゆく水の音に夜昼の別《わか》ちはないが、昼はやがて夜となった。
 食後散歩に出ると、行くともなしに、またもや頼家の方へ足が向く。なんだか執《と》り着かれたような気もするのであった。墓の下の三洲園という蒲焼屋では三味線の音《ね》が騒がしくきこえる。頼家尊霊も今夜は定めて陽気に過させ給うであろうと思いやると、われわれが問い慰めるまでもないと理窟をつけて、墓へはまいらずに帰ることにした。あやなき闇のなかに湯の匂いのする町家へたどってゆくと、夜はようやく寒くなって、そこらの垣に機織虫《はたおりむし》が鳴いていた。
 わたしの宿のうしろに寄席があって、これも同じ主人の所有である。草履ばきの浴客が二、三人はいってゆく。私も続いてはいろうかと思ったが、ビラをみると、一流うかれ節三河屋何某一座、これには少しく恐れをなして躊躇していると、雨がはらはらと降って来た。仰げば塔の峰の頂上から、蝦蟆《がま》のような黒雲が這い出している。いよいよ恐れて早々に宿に逃げ帰った。
 帰って机にむかえば、下の離れ座敷でもまたもや義太夫が始まっ
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