も、ダテにしても、政宗はやはり偉いのである。独眼龍《どくがんりゅう》などという水滸伝《すいこでん》式の渾名《あだな》を付けないでも、偉いことはたしかに判っている。その偉い人の骨は瑞鳳殿《ずいほうでん》というのに斂《おさ》められている。さきごろの出水に頽《くず》された広瀬《ひろせ》川の堤《どて》を越えて、昼もくらい杉並木の奥深くはいると、高い不規則な石段の上に、小規模の日光廟が厳然《げんぜん》とそびえている。
わたしは今この瑞鳳殿の前に立った。丈《たけ》抜群の大きい黒犬は、あたかも政宗が敵にむかう如き勢いで吠えかかって来た。大きな犬は瑞鳳殿の向う側にある小さな家から出て来たのである。一人の男が犬を叱りながら続いて出て来た。
彼は五十以上であろう。色のやや蒼《あお》い、痩形《やさがた》の男で、短く苅った鬢《びん》のあたりは斑《まだら》に白く、鼻の下の髭《ひげ》にも既に薄い霜がおりかかっていた。紺がすりの単衣《ひとえもの》に小倉《こくら》の袴《はかま》を着けて、白|足袋《たび》に麻裏の草履《ぞうり》を穿《は》いていた。伊達家の旧臣で、ただ一人この墳墓を守っているのだと云う。
わたしはこ
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