は実に驚いた。何かの子細があって栄之丞が自分を欺すのではないかと一旦は疑った。しかしいつかの晩、治六がふと口走った身請けの話とその金高の符合していることを思い合わせると、栄之丞の話も嘘ではないらしく思われた。次郎左衛門がもうきのうの大尽でないことも大抵想像された。
 相手のおちぶれたのも仕方がない。自分はおちぶれた男を見捨てるほどの薄情な女でもないと、彼女は自分でも思っていた。現に今でも栄之丞を貢《みつ》いでいた。しかしそれは相手にも因ることで、いかに不実な男に対する面当てでも、彼女は無宿同様の次郎左衛門に付きまとって居ようとは思わなかった。彼女は影の薄れた佐野の大尽の袖には取り付きたくなかった。
 思い切ろうとした栄之丞は、呼びもしないのに向うから来た。取りすがろうとした次郎左衛門は足もとのぐらついているのが今判った。すべての事が自分の考えと食い違って来たので、八橋はちょっと見当がつかなくなった。
「そうして、その話をしに来なんしたからは、主《ぬし》はわたしを佐野へやる気でおざんすかえ」と、八橋は栄之丞の性根を試すように訊いた。
「男が恥を打明けて頼むのだ。わたしも忌《いや》とは言わ
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