なって来たらしく、彼女の総身は雪女のように真っ白に塗られていた。
「妹か。今頃どうして来た」
門に立ってもいられないので、栄之丞はともかくも再び内へ引っ返すと、お光もからだの雪を払ってはいって来た。家の中はもう暗かった。
「兄さま」と、お光は重ねて兄を呼んだ。その声の怪しく顫《ふる》えているのが栄之丞の耳についた。
「なんだ」
少し不安にもなって来たので、彼は行燈をまんなかに持ち出して灯をとぼした。その灯に照らされた妹の顔は真っ蒼であった。髪もむごたらしく乱れていた。着物の襟も乱れて、袖の八つ口もすこし裂けていた。何か他人《ひと》とむしり合いでもしたのではないかとも思われたので、兄はあわただしく訊いた。
「え、どうした。誰かと喧嘩でもしたのか」
お光はまだ動悸が鎮まらないらしく、幅の狭い肩をいよいよせばめて、胸を抱えるように畳に俯伏していたが、やがてわっ[#「わっ」に傍点]と泣き出した。
「おい、どうしたんだ。泣いていてはわからない。主人に叱られたのか、朋輩と喧嘩でもしたのか」
お光は崩れかかった島田をぐらつかせながら頭《かぶり》を振った。彼女はまだすすり泣きの声をやめなかった
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