「口は禍いの門《かど》で、飛んでもねえことになったが、まったくなんでもねえことでがすよ」と、治六も困り切っておろおろ声になった。
「嘘をつきなんし」
「隠すと、抓《つね》りんすによ」
 八橋は睨んだ。浮橋は小突《こづ》いた。そうして、お前が言わなければ言わないでもいい、わたしが直かに主人に訊いてみると八橋は言った。そんなことを主人の耳に入れられては困ると、治六はあわててさえぎった。困るならば素直に言えと、二人は嵩《かさ》にかかって責めた。
 防ぎ切れなくなって、治六もとうとう白状した。主人がいつまでも廓がよいをして、こういう風に無駄な金をつかっていては際限がない。廉《やす》い金でできることならば、いっそここで花魁を請け出してしまった方がいいと思ったので、ほんの自分の一料簡で訊いて見たまでのことである。主人はまったく知らないことであると、何もかも打ち明けて話した。それを聴いて、八橋は又かんがえていた。そうして、幾らぐらいまでの金を出してくれることが出来るのだと訊いた。
「まず、三、四百両、その上はむずかしい」と、治六は正直に答えた。
 二人の女は顔を見合せた。とても問題にならないとでもい
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