る妹に優しく言った。
彼が堀田原の知りびとをきょう訪ねたのも、その用向きであった。妹のお光ももう明ければ十八になる。年頃の娘を浪々の兄の手もとにおいて、世帯《しょたい》やつれをさせるのも可哀そうだと思って、彼は妹のために然るべき奉公口を探していた。なるべく武家奉公をと望んでいたのであるが、どうも思わしい口が見つからなかった。しかし町家ならば相当の口があると、その人が親切に言ってくれた。町人といっても、人形町《にんぎょうちょう》の三河屋という大きい金物問屋で、そこのお内儀《かみ》さんがとかく病身のために橋場《はしば》の寮に出養生をしている。台所働きの下女はあるが、ほかに手廻りの用を達《た》してくれる小間使いのような若い女がほしい。年頃は十七、八で、あまり育ちの悪くない、行儀のよい、おとなしい娘がほしいというのである。別に忙がしいというほどの用もない、給金はまず一年一両二分と決めておいて、当人の辛抱次第で着物の移り替えその他の面倒も見てやる。もし長年《ちょうねん》するようならば、嫁入りの世話までしてやってもいいというので、まず結構な奉公口である。そこへ妹をやってはどうだと勧められて、栄之
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