唯うっとりとうしろの川の水を眺めていたりして、人が声をかけても返事をしないこともあるんですよ。今思うと、やはりこんなことがある前兆《しらせ》だったのかも知れませんね」と、お染はまた言った。
 お里がこの二、三日物思わしげに暮らしたのは、母に別れる前兆であったろうか。なんにも知らないお染が一途《いちず》にそう解釈するのは無理もなかった。しかし林之助は、もっと深い意味でこれを考えさせられた。あの以来、ぼんやりするほど思いつめているお里を、自分はどう処分しようと考えているのか。彼は我ながらぞっ[#「ぞっ」に傍点]とするほどに自分の酷《むご》たらしい心を恐れた。
「里ちゃんの家は都合がいいのかね」と、彼は知れ切ったようなことを訊いてみた。
 お染も知れ切った事をいうような顔をして、すぐ打ち消すように答えた。
「どうでこういうところへ来ているくらいですもの、都合のいいことがあるもんですか。ほかに頼りになるほどの親類もないそうですから。阿母《おっか》さんの病気が長引くようなら勿論のこと、今すぐに死なれても第一にお葬式《とむらい》にも困るくらいでしょうと思うんですよ。ここのおかみさんも幾らか面倒をみ
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