るした木戸番小屋で鰯を買っているのが見えた。
柳橋の袂で林之助は友達に逢った。彼はやはり浅草の或る旗本屋敷の中小姓を勤めている男で、これも今夜の発句の会へ出る一人であった。彼は梶田弥太郎といって、林之助よりも三つばかり年長《としかさ》であった。
「やあ。どこへ」と、二人は立ち停まった。今夜の発句の話なども出た。弥太郎はこれから両国へ遊びに行こうと言った。ゆくさきは列び茶屋に決まっているので、林之助はすこし躊躇した。お里に逢うのはなんだか気が咎めるようであった。
「え、お里の顔でも見に行こうじゃないか」と、弥太郎は言った。「それとも、御用かい」
着流しの林之助は御用に行くとも言われなかった。彼は断わり切れないで一緒に引き摺られてゆくと、不二屋の軒提灯は秋風にゆらめいていた。二人はずっと店へはいって床几に腰をかけると、これも顔なじみのお染という若い女が愛想よく茶を汲んで来たが、茶釜の前にもお里のすがたは見えないので、林之助は一種の失望を感じた。
「きょうはどうしたい、お里は……」と、弥太郎も的《あて》がはずれたような顔をして訊いた。
「里《さあ》ちゃんはもう少しさっきまでいたんですけれ
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