。彼は苦しまぎれに門番の老爺《おやじ》を口説いた。門番は内職をして小金を溜めているということを知っているからであった。
 門番は素直に貸してくれないのを林之助はいろいろに頼んだ。それでも彼は肯《き》かなかった[#「肯《き》かなかった」は底本では「肯《き》かなった」]。門番は林之助が蛇つかいの小屋や列び茶屋へ足近く入り込むことを知っているので、彼の銀《かね》の入り途を疑って、そういう不信用の人間に大事の金を貸されないというような口ぶりで、あくまでも頭《かぶり》を振り通した。
 林之助も根負けがして、仕方がなしに屋敷を出たが、どう考えても空手では行かれなかった。彼は友達の梶田弥太郎のところへ行って頼もうと思ったが、これから訪ねて行っても果たして家に居るかどうだか判らなかった。居たところできっとその銀が出来るかどうかも疑問であった。そんなことに暇取っているうちに、葬いが出てしまっては何にもならないと、林之助はむやみに気が急《せ》いた。
「ええ、もう仕方がない」
 彼は思い切って馴染みの質屋へかけ込んで、大小を投げだして銀を借りた。武士の大小であるから片時《へんし》も離すことはできない。今夜じ
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