《うちと》けて話をする機会もあるまい。かたがた今日は早く帰る方がいいと思って、彼は早々に暇乞《いとまご》いをしてここを出た。
路地の出口で菓子売りのお此に逢った。お此もこの近所に住んでいるので、これからお里の家へ悔みに行くのだと言っていた。
「旦那さまもお里さんのところへいらしったんですか」と、お此は子細らしく訊いた。
隠すこともできないので、林之助も正直に答えると、お此は危ぶむようにささやいた。
「あなた、お里さんのところへ行くのはお止しなさいましよ。飛んだことが出来ますよ」
このあいだ両国の楽屋で蛇責めに逢ったことを、お此は身ぶるいしながら話した。
「あの時のことを考えると今でもぞっ[#「ぞっ」に傍点]とします。わたしはもうそれぎりあの楽屋へは商《あきな》いにまいりません。お絹さんは、もしこの後も相変らず不二屋にあなたの姿を見掛けるようなことがあると、この蛇を持ってお里のところへお礼に行くと、こう言うんです。それですもの、もしあなたがここの家《うち》へ来たなんていうことが知れたら、そりゃあどんな騒ぎが起るか知れませんよ。第一お里さんが可哀そうですからね。蛇なんぞ持って来られた
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