いるあいだは几帳面に勤めて置かなければいけねえ」
「それもそうかも知れない」
 お絹も別に忌《いや》な顔をしなかったので、お君は引っ返して鰻屋へ断わりに行った。その帰るのを待ちかねて林之助も帰り支度をした。
「じゃあ、あしたまた来るぜ。君ちゃん、いいかい。頼むよ」
 路地を出ると、日はもう暮れかかっていた。お君は路地の口まで送って来て、姐さんの容体《ようだい》がどうもよくないから、あしたもきっと来てくれと縋《すが》るように言った。その涙ぐんでいる顔が林之助にはいじらしく見えた。彼はきっと来ると約束して別れた。
 橋の袂へ来ると、芝居小屋では打出しの太鼓がきこえた。早く閉まった観世物小屋では、表の幟を取り卸しているのもあった。焼いたとうもろこしを横ぐわえにして、なにか大きな声で唄いながら通る中間《ちゅうげん》もあった。まだすっかりは暮れ切らないのに、真っ白な白粉の顔を手拭にかくして石置場の方へ忍んでゆく若い女の群れもあった。そのあとを追っかけて、中間たちが又なにか呶鳴っていた。
 こうしたみだらな夕暮れの混雑に眼なれている林之助は、右も左も見向きもしないで、急ぎ足に橋を渡った。川面《かわ
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