いう風説がお縫や三左衛門の胸を冷やした。
外記はそんなことに頓着しないらしかった。おととしまではこの日に墓参を欠かさなかったが、きょうは居間に閉じ籠って碌ろく口も利かなかった。午飯《ひるめし》を食ってしまっても何かぼんやりと考え暮らしていたが、やがて用人を呼びつけた。
「三左衛門。少し金子入用だが、知行所《ちぎょうしょ》から取り立てる工夫はないか」
おととし以来、これは毎々のことであるので、用人も手強く断わった。
「いかにご自分の御《ご》知行所でも、さだめのほかに無体の御用金などけしからぬ儀でござります」
「では、蔵の中から不用の鎧兜《よろいかぶと》太刀などを持ち出して、売り払ってはどうだ」
「鎧兜太刀などは武士の表道具、まして御先祖伝来の大切な品々、お前さまの御自由には相成《あいな》りませぬ」
何を言っても取り合わないばかりか、あべこべに主人を遣《や》り込めるような調子に、外記はむっとした。彼は黙って起ちあがって、床の間の鎧櫃《よろいびつ》から一領の鎧を引き摺り出して来た。
「これ、三左衛門。おれが今この鎧を持ち出して勝手に売り払ったらどうする」
三左衛門は形を改めて、唯今も
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