だ。その眼がしらには涙が浮いていた。
十吉には理屈が判らなかった。
「どうかしたの」と、彼は不思議そうにお米の顔をのぞくと、相手は顔をそむけて手拭を眼に当てた。すすり泣きをしているらしい。十吉も手が着けられなかった。しかし、打っちゃっても置かれないので女の肩に手をかけて無理に縁に押し据えて、いろいろに宥《なだ》めながら子細を訊くと、お米の小さい胸には思いも付かない妬みの火が燃えていた。納戸《なんど》の奥に封じ込めておいた美しい駈落ち者を、お米はいつか見つけ出していたのであった。
なんにも知らない、まして歳の行かないお米は、その美しい女をいちずに自分の仇と呪って、あわせてお時を怨んだ、取り分けて十吉を恨んだ。もう二度とここの家へは足踏みをしまいと思ったが、その位でとても堪忍のできることではなかった。彼女はこの頃の雨にぬれながら時どきに様子を窺いに来たが、懸け違って外記の姿を見つける機会はなくて、あいにくにいつもお時や十吉がその憎い女と睦まじそうに語らっているところばかりが、彼女の疑いの眼に映った。お米の胸は妬みの火にやけただれた。
きょうも自分の家の前でお時に逢ったが、お米はわざと
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