ようにうす明かるい初夏の光りが洩れた。しめり切って重そうにうなだれている庭の若葉は、そよ吹く風に身ぶるいをして青いしずくを振るいおとした。田圃でも池でも蛙がまた鳴き出した。十吉は縁に腰をかけて、濡《ぬ》れた土に三つ四つころげている青梅の実を眺めていたが、やがてふいと眼をあげて表を見た。
 まばらな竹籬《たけがき》の外に立って、お米は息を殺したようなふうで一心に内を覗いていた。いつもは遠慮なしにはいって来るのに、きょうは竹籬を境にして迂闊に庭へ踏み込もうとはしなかった。十吉があごで招いても、彼女は無言で情《すげ》なく頭《かぶり》をふった。
「おっかさんはいない。おはいりよ」と、十吉は小声で呼んだ。が、お米はやはり拗《す》ねたようにためらっていた。
 十吉は低い下駄を突っかけて、庭の水溜りを蛙のように飛び越えながら竹籬の外へ出た。そうして、まだ素直に来そうもないお米の手を取って、無理に内へ連れ込んで来たが、お米はやはり立ったままで縁に腰をおろそうともしなかった。
「この頃ちっとも来なかったね」
「来るとお邪魔だろうと思って……」と、お米はことし十六の小娘に似合わない、怖い眼をして十吉を睨ん
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