水を持って来た。二人は蓑をぬいで足を洗った。
外記は浅黄色の単衣《ひとえもの》の裾を高くからげて、大小を落し差しにしていた。女は緋の長襦袢の上に黒ずんだ縮緬を端折《はしょ》って、水色の細紐《しごき》を結んでいた。顔を包むためか、白い手拭を吹き流しにかぶって手に笠を持っていた。二人とも素足であった。女の白い脛《はぎ》に紅い襦袢がぬれてねばり着いているのは媚《なまめ》かしいというよりも痛々しかった。
この雨の夜に殿様と連れ立って来た美しい女が誰であるかは、お時にもたいてい想像されたので、彼女は十吉に眼くばせして雨戸をぴったり閉めさせた。男はすぐに炉のそばへ寄って来て、ぬれた袂を乾かした。女は手拭をとって、鬢《びん》のしずくが玉と散るのを払ったりしていた。
「殿様。いらっしゃりませ」
母子がうやうやしく手をついて、ひたいを畳に摺り付けるのを、外記は手をあげて制した。
「いや、その挨拶はやめてくれ。乳母はおれの留守にたびたび来たそうだから、大抵の話は聴いているだろう。くどくは言わない。当分この女を預かってくれ」
言う尾について女も軽く会釈した。
「わたしは大菱屋の綾衣でおざんす。お前が
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