らそれへと毎日同じことがいろいろに考えられた。そのうちでもこの頃のお時の胸をいっぱいに埋めているのは、番町の殿様の問題であった。箕輪と山の手と懸け離れていては、そうたびたびたずねて行く訳にはいかない。たとい近いとしても、うるさく出這入りはできない。ただ、よそながら案じているばかりである。
先月そっとお屋敷をたずねた時にも、殿様はやはりお留守であった。お嬢さまの顔はいよいよ窶《やつ》れていた。ことしになっても殿様の放埒はちっともやまないとのことであった。お時は又もや涙ぐんでとぼとぼ[#「とぼとぼ」に傍点]と帰って来た。
自分の力ではどうにもならないとは知りながらも、自然の成り行きに任して置くということは考えるさえも怖ろしかった。
万々一いよいよ甲府勝手でも仰せ付けられたら、藤枝のお家《いえ》はつぶれたも同様である。お時は自分の乳をあげた若様がそんな不心得な人間になったということは、なんだか自分にも重い責任があるようで、心苦しくってならなかった。
今夜もそれを繰り返していると、十吉は退屈そうに煤《すす》けた天井を仰いでいた眼を表の方に向けて、雨の音に耳を引っ立てた。
「おお、降る、
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