で、世には妖怪のあることが確かめられたのであった。
その本人の島川は一旦|本復《ほんぷく》して、相変らず奥に勤めていたが、それからふた月ほどの後に再び不快と言い立てて引籠っているうちに、ある夜自分の部屋で首をくくって死んだ。前々からの不快というのも、なにか人を怨むすじがあった為であると伝えられた。
してみると、さきの夜の白い女は単に一種の妖怪に過ぎないのか。あるいはその当時から島川はすでに縊死の覚悟をしていたので、その生霊《いきりょう》が一種のまぼろしとなって現われたのか。それはいつまでも解かれない謎であると、中原武太夫が老後に人に語った。これも前の話の離魂病のたぐいかも知れない。
底本:「異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二」原書房
1999(平成11)年7月2日第1刷
入力:網迫、土屋隆
校正:門田裕志、小林繁雄
2005年6月26日作成
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