い》の方々は何をしてござるのやら……。このごろの日和《ひより》くせで、又降って来たようじゃが……。
(雨すこしく降る。玉虫帰りきたる。)
玉虫 今戻りました。
おしお おお、お帰りなされましたか。あいにく降ってまいったので、さぞお困りでござりましょう。
玉虫 降りみ降らずみはこの頃の習い、さしたる雨でもござりませぬ。(ぬれたる被衣をぬぎて縁に上がる。)いつもいつも留守を頼み、ありがとうござりました。して、妹《いもと》はまだ戻りませぬか。
おしお まだお帰りにはなりませぬ。
玉虫 このごろは兎角にそわそわしておちつかず、内を外にして出あるいているは、どうしたことであろうかのう。
(眉をひそむれば、おしおは打笑う。)
おしお それも生業《なりわい》じゃ、是非もござりますまい。
玉虫 生業とは……。
おしお え。(口ごもる。)
玉虫 妹がどのような生業をして居りまするぞ。
おしお さあ、うっかりと口をすべらしたはわたくしのあやまり、どうぞ御勘弁くださりませ。
玉虫 いや、詫びることはない、あからさまに云うて下さればよいのじゃ。
(玉虫の妹玉琴、十七八歳、被衣をかぶりて下のかたより出で、門《か
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