人 えゝ、休めちまへ、休めちまへ。
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(播磨も權次權六も身がまへする。四郎兵衞、その他四人も身繕《みづくろ》ひして詰めよる。娘はうろ/\してゐる。この時、陸尺《ろくしやく》に女の乗物をかゝせ、若党二人附添ひて走らせ来り、喧嘩のまん中へ乗物をおろす。)
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長吉 おい、おい。お前達も目さきが利かねえ。
仁助 こゝへ、そんなものを卸《おろ》してどうするんだ。
二人 退いてくれ、退いてくれ。
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(權次權六は若党の顔を見ておどろく。)
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權次 おゝ、こなたは小石川の。
權六 澁川様の御乗物か。
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(乗物の戸をあけて澁川の後室眞弓、五十余歳、裲襠《うちかけ》すがたにて出づ。)
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播磨 おゝ、小石川の伯母上、どうしてこゝへ……。
眞弓 赤坂の菩提所《ぼだいしよ》へ仏参のかへり路、よいところへ来合せました。天下の御旗本ともあるべき
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