、菊……。
播磨 (じれる。)よい、よい。早くゆけ。
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(十太夫は上のかたに引返して去る。)
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播磨 こりや、菊。そちはなんと心得て、わざと大切の皿を割つた。仔細を申せ。(物柔かに云ふ。)
お菊 おそれ入りましてござりまする。
播磨 最前も申す通り、その皿を割れば手討に逢うても是非ないのぢや。それを知りつゝ自分の手で、わざと打割りしとあるからは、よく/\の仔細がなくてはなるまい。つゝまず云へ。どうぢや。
お菊 もう此上はなにをお隠し申しませう。由ないわたくしの疑ひから。
播磨 疑ひとはなんの疑ひぢや。
お菊 殿様のお心をうたがひまして……。
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(播磨はだまつてお菊の顔を睨む。)
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お菊 このあひだも、鳥渡《ちよつと》お耳に入れました通り、小石川の伯母御様が御媒介で、どこやらの御屋敷から奥様がお輿入《こしい》れになるかも知れぬといふお噂、あけても暮れてもそればつかりが胸につかへて……。恐れながら殿様のお心を
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