どうせ姐《ねえ》さんに褒《ほ》められる柄ぢやあねえや。はゝゝゝゝゝゝ。
娘 ほゝ、とんだ粗相を申しました。
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(ふたりは茶をのんでゐる。石段の上より青山播磨、廿五歳、七百石の旗本。あみ笠、羽織、袴。あとより權次、權六の二人、いづれも奴にて附添ひ出づ。)
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播磨 桜はよく咲いたな。
權次 まるで作り物のやうでござりまする。
權六 たなばたの赤い色紙《いろがみ》を引裂いて、そこらへ一度に吹き付けたら、斯うもあらうかと思はれまする。
播磨 はて、むづかしいことを云ふ奴ぢや。それより一口に、祭礼の軒飾りのやうぢやと云へ。はゝゝゝゝゝ。
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(三人は笑ひながら石段を降りる。)
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娘 お休みなされませ。
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(三人は上の方の床几にかゝる。長吉と仁助は見てさゝやき合ふ。娘は茶を汲んで三人に出す。)
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長吉 おい、ねえさん。こつちへも
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