が悪いのだ。幸之助も悪いが、お北も悪い。つまりは両成敗《りょうせいばい》で型を付けるよりほかないのだ。おれはもう覚悟している。おまえ達もそのつもりでいろ」
 お由は無言で眼を拭いた。長三郎も黙って聴いていると、父はやがて伜の方へ向き直った。
「今も云い聞かせた通りの次第だが、おれは勤めのある身の上だ。御用をよそにして娘のゆくえを尋ね歩いてはいられない。おまえは部屋住みだ。これから江戸じゅうを毎日探し歩いて、姉の隠れ場所を見つけて来い。途中で出逢ったらば、無理に連れて帰って来い」
 いかにこの時代でも、十五歳の小伜に対してこんな役目を云いつけるのは、少しく無理なようにも思われたが、これは迂闊《うかつ》に他人にも頼まれない用向きであるから、長八もわが子に頼むよりほかはなかったのである。その事情を察しているので、長三郎も断わることは出来なかった。
「承知しました」
「けれども、おまえ……」と、お由は我が子に注意するように云った。「家《うち》の姉さんの家出したのはほかに仔細のあることで、おとなりの幸之助さんとは係り合いが無いのかも知れないからね。そのつもりで、むやみに手暴《てあら》な事をしちゃ
前へ 次へ
全165ページ中91ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング