《かが》んで、留吉は外の様子を窺っていたが、怪しい物音は再び聞こえなかった。根負けがして寝床へ戻ったが、彼はいよいよ眼が冴えて眠られなかった。
 どうで夜明かしと度胸を決めているのであるから、眠られぬのは平気であったが、今夜の出来事について彼はいろいろに考えさせられた。男は誰か、女は何者か、なんのわけで夜更けに庭さきで、掴み合っていたのか。自分もその物音を聞いたばかりで、その正体を見とどけないのであるから、物に馴れている留吉にも見当《けんとう》が付かなかった。
 張り詰めている気もゆるんで、彼は暁け方から思わずうとうとと眠った。再び眼をあくと、いつの間にか雨戸は開け放されて、縁さきには朝の光りが流れ込んでいた。手足のまだ痛むのを堪《こら》えながら、留吉は寝床の上に起き直ると、枕もとの煙草盆には新らしい火が入れてあった。自分の寝ているうちに、小坊主が覗きに来たものと見える。彼は自分の油断を後悔しながら、不自由の手で煙草を一服すった。
「寝首を掻かれねえのが仕合わせだった」と、彼は独りで苦笑《にがわら》いした。
 寺では寝巻を貸してやろうと云ったのを断わって、彼はゆうべからごろ寝をしていた
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