覚悟をきめて、しずかに夜の更《ふ》けるのを待っていると、目白不動の四ツ(午後十時)の鐘を聞いて、寺内もひっそりと鎮まった。
 留吉はこのあいだからこのあたりを徘徊して、附近の様子を探っていたので、この寺の相当に大きいことを知っていた。建物は古いが手入れもよく行き届いていて、寺内には住職のほかに納所坊主が二人、小坊主が一人、若い寺男が一人、都合五人が住んでいる。寝床を敷きに来た小坊主に訊くと、住職の名は祐道《ゆうどう》、納所は善達と信念、寺男は弥七と云うのである。
「ほかの坊主はともかくも、和尚の面《つら》つきがどうも気に入らねえ」と、留吉は寝ながらに考えた。
 外の風の音はまだ止まないで、枕もとの雨戸も時々に揺れるように響く。その庭さきで何やら人の争うような物音がきこえた。猫や犬が狂っているのではない。確かに人と人とが挑《いど》み争っているのである。
 留吉は寝床から這い出して、なおも聴き耳を立てていると、そとの人は息をはずませて争っている。さらに障子をそっとあけて、縁側まで這い出して雨戸越しに窺うと、外の人は二人であるらしく、一人は男、一人は女であることも、その息づかいで大かたは想像
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