五郎の名はおれも聞いている。岡っ引仲間でもなかなかの腕利きだそうだ。それがもう大抵は見当を付けたと云う以上、蝶々の方はどうにか埒《らち》が明くのだろう。こうなると、蝶々はどうでもいい、一日も早くお北と幸之助をさがし出して、こっちの埒を明けなければならない」
 父としてはこう云うのが当然であると、長三郎も思った。蝶の詮議などはしょせん一種の物好きに過ぎない。それよりも姉のゆくえ詮議が大事であると考えたので、彼は父とあしたの探索の打ち合わせをして寝床にはいった。しかも彼は眼が冴えて眠られなかった。どうでもいいとは思いながらも、やはり彼は蝶のことが気にかかってならない。お冬と白い蝶と、その二つを結び付けて、彼はなんとかしてその謎を解こうと試みたが、結局は無駄な努力に終った。
 長三郎が眠られないあいだに、おなじく眠らない人があった。それは吉五郎の子分の留吉で、彼は寺のひと間に衾《よぎ》をかぶって、そら寝入りをしながら寺内の様子を窺っていた。

     一一

 医者の診察によると、留吉の怪我は幸いに差したることでも無かった。しかし吉五郎は寺の納所《なっしょ》にたのんで、あしたの朝は駕籠を迎
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