もよくない。平井善九郎そのほか五、六人の遊び友達と連れ立って諸方を押し廻している。万力の刀を取り上げたのも銀之助の仕業で、天下の力士に両手をついて謝らせたと、彼は自慢そうに吹聴《ふいちょう》していた。
その一件の当時、その船に乗り合わせていたのは確かにお俊であったが、彼女が伊勢屋に引かされた後、銀之助がその妾宅へ出入りしていたかどうかはよく判らないと云うのであった。
しかも以上の探索で半七の肚は決まったので、その翌朝、八丁堀同心熊谷八十八の屋敷に行って、委細の事情を申し立てた。その許可を得て、彼は直ぐに深川の北六間堀へ出向いて、柘榴伊勢屋の主人由兵衛を番屋へ呼び出した。
それと同時に、本所回向院門前に住む二段目相撲万力甚五郎の宅をあらためると、家財をそのままにして、万力は駈け落ちしたと云うのである。その台所の床下から首のない女の死骸があらわれた。
「先ずこんなわけで、これだけお話をすれば、もう大抵お判りでしょう」と半七老人は云った。「女の生首を碁盤に乗せて、武家屋敷の門前にさらして置く。……事件は頗る珍らしいのですが、その事情は案外に単純で、別に講釈をする程のことはありません」
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