。判らねえことがあったら、また訊きに来るとして、きょうはこれで帰るとしよう。御用とは云いながら、稽古所へ来て邪魔をして済まなかった。こりゃあ少しだが、白粉でも買ってくんねえ」
辞退する駒吉に幾らかの白粉代を渡して、半七はここを出た。相変らずの寒い風に吹かれながら回向院前へ来かかると、半七は呼び出しの三太に逢った。
云うまでなく、この当時の大相撲すなわち勧進相撲は春場所と冬場所の二回で、冬場所は十月の末頃から十一月にかけて晴天十日の興行と決まっていた。その冬場所が終った後で、呼び出しの三太は江戸に遊んでいるらしかった。彼は半七を見て挨拶した。
「親分、お寒うございます」
「冬場所はたいそう景気が好かったそうだね」
「世間がそうぞうしいのでどうだかと案じていましたが、お蔭でまあ繁昌でした」
「いいところでおめえに逢った。少し訊きてえことがある」
回向院の境内へ三太を連れ込んで、半七は万力甚五郎の詮議をはじめた。
五
日の暮れる頃に松吉は帰って来たが、その報告は小栗の用人の話に符合していた。大瀬の屋敷の養子銀之助は、その当時の旗本の次三男にあり勝ちの放蕩者で、近所の評判
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