そうすると、おとといの晩はお俊ひとりで寝ていたわけだね」
「そうかも知れません。日の暮れる頃にどこへか出て行って、夜の更けた頃に帰って来たようです。わたくしはもう寝ていましたから、よくは存じませんが、格子をあける音がしましたから、その時に帰って来たのだろうと思っていました」
「格子をあけて帰って来て、また出て行ったような様子はなかったかね」
「さあ」と、駒吉はかんがえていた。「今も申す通り、わたくしはもう寝ていましたので、半分は夢うつつで、帰って来たらしい様子は知っていましたが、また出て行ったかどうだか、そこまでは覚えて居りません」
 時々に遊びに来るという若い武家について、半七は更に詮議をはじめた。
「その武家というのはお俊の情人《いろ》だろうね」
「そうかも知れません」と、駒吉は笑っていた。「見たところ、粋な道楽肌の人でしたから……」
「相撲取りで出這入りをする者はなかったかね」
「伊勢屋の旦那がたいそう御贔屓だそうで、万力というお相撲さんが来ることがありました」
「万力はひとりで来る事もあったかえ」
「ひとりで来たことは無いようです。大抵は旦那と一緒のようでした」
「いや、有難う
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