えか」
「いいえ、誰も来ていやあしません」と、駒吉は急いで茶をいれる支度にかかった。
「もう構わねえがいい。遊びに来たのじゃあねえ」と、半七は直ぐに用談に取りかかった。「実は隣りのお俊の一件だが、あの女の旦那は深川の柘榴伊勢屋だね」
「そうです」
「伊勢屋は始終来るのかえ」
「ちょいちょい見えるようでした」
「旦那のほかに誰か来やあしねえか。若い男でも……」
駒吉はすこし躊躇したが、半七の前で隠すことも出来ないらしく、正直に話した。
「ええ、時々に若い男の人が……。お武家さんのようでした」
「泊まって行くような事もあったかえ」
「泊まることは無かったようですが、いつも一人で来て、四ツ過ぎまで遊んでいたようです。女中の話では、なんでも深川の方の人だと云うことでした」
「女中はなんと云うのだね」
「女中はお直さんと云って、十七、八のおとなしい人でした。家《うち》はやっぱり深川で、大島|町《ちょう》だとか云っていました」
「きのう引っ越しをする時に、お直もいたかえ」
「お直さんは見えなかったようです。あとで聞くと、もう前の日あたりに暇を取って、出て行ってしまったらしいと云うことでした」
「
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