ました。可哀そうに三甚だって、そんなにひどい意気地なしでも無いのですが、そばに女が付いていて、これがむやみに心配して騒ぐので、とうとうこんな事になったのです。女に惚れられるのは恐ろしい。あなた方も気をおつけなさい。あははは」
「そうすると、五人だけは挙げられたわけですが、もう一人はどうしました」
「もう一人は丹後村の兼吉、こいつは年上だけに巧く逃げたと見えて、容易に見付かりませんでしたが、その年の秋に上総《かずさ》の方で挙げられました。昔でも悪い奴が無事に逃げおおせたと云うのは少ないものです。
 そこで、このお話ですが……。岡っ引が逃げて、泥坊が追っかける。まことにおかしいようですが、あの廻り燈籠を御覧なさい。いろいろの人間の影がぐるぐる廻っている。あとの人間が前の人間を追っかけているように見えますが、それが絶えず廻っていると、見ようによっては前の人間があとの人間を追っているようにも思われます。人間万事廻り燈籠というのは、こんな理窟かも知れませんね」



底本:「時代推理小説 半七捕物帳(六)」光文社文庫、光文社
   1986(昭和61)年12月20日初版1刷発行
※底本は、物を数
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