になって、例の神明の千次がわたくしの所へ来まして、金蔵は王子稲荷のそばの門蔵という古鉄買《ふるかねかい》の家に隠れていると注進しました。そこで、念のために善八を見せにやると、門蔵というのは古鉄買は表向きで、実は賍品買《けいずかい》と判りました。唯ここに不思議なことは、金蔵は右の足に踏み抜きをして、それがだんだんに膿《う》んで来て、ひと足も外へ出られないと云うのです。その金蔵がわたくしの名を騙《かた》って、植新へ押し掛けて行ったばかりか、びっこも引かずに逃げ廻っていたのは、どういうわけだか判らないが、ともかくも召捕れというので、わたくしが善八と松吉を連れて行くと、金蔵はまったく動かれないで寝ていたので、難なく引き挙げられました。こいつは伝馬町の牢屋をぬけ出して、まだ一丁も行かないうちに、折れ釘を踏んで右の足の裏を痛めたので、遠いところへ行くことが出来ない。ほかの者とは分かれわかれになって、京都無宿の藤吉に介抱されながら、ひとまず王子の門蔵の家へころげ込むと、その晩から踏み抜きの傷がひどく痛み出した。といって、表向きに医者を頼むわけにも行かないので、買い薬などをして塗っていたが、だんだんに
前へ 次へ
全46ページ中40ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング