うです。恐ろしい太鼓持もあったもので……。そんな事にでもなったら何もかもめちゃくちゃで、結局は万事露顕になるのでしたが、そこまで行かずに食い止めたのは仕合わせでした。
しかしここに困った事は、三八を表向きに突き出すと、増村の店に迷惑がかかる。見逃がしてしまうと、わたくしが八丁堀の旦那に済まない。板挟みになって困ったのですが、増村の番頭と相談の上で、お葉の方は三十両で形《かた》を付け、八丁堀の坂部さんの方へは番頭同道で相当の物を持参、それでまあ勘弁して貰いました。つまりは一人も怪我人を出さずに済んだわけです。
いや、怪我人といえば彼の次郎兵衛、姉から知らせてやったのでしょう、この一件が無事に済んだ事を知って怱々に江戸へ戻って来ましたが、江戸はおそろしい所だと云ってすぐに故郷へ帰ろうとするのを、姉夫婦にひき留められて、例の蝋燭問屋の万屋へ奉公することになりました。そうすると、その年の十二月二日は安政の大地震、店の土蔵が崩れたので、その下敷きになって死んでしまいました。どうしてもこの男には江戸が祟《たた》っていたと見えます。
この地震で、花川戸のお葉も死にました。お磯は吉原へ行って、逢
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