も打ち明けられないので、自業自得とはいいながら、増村の息子は弱り切っていたのです。ほかに同じ遊び友達があるのに、お葉がなぜ増村ばかりを責めていたのかと云うと、増村の身代が一番大きいのと、最初にお城の一件を云い出したのは増村の息子だというので、専らここばかりへ押して行って、口留め金をくれなければ其の秘密を訴えると云う。これは強請《ゆすり》の紋切形ですが、ゆすられる身になると、それが世間へ知れては大変、わが身ばかりか店の暖簾《のれん》にもかかわる大事ですから、今さら後悔しても追っ付かない。その最中に事が露《ば》れて、まあ大難が小難で済みました」
「三八は高見《たかみ》の見物ですか」
「いや、それだから大難が小難と云うので……」と、老人は顔をしかめて云った。「三八は自分も係り合いだから、仲へはいって三十両か五十両でまとめようと骨を折ったのですが、お葉は容易に承知しない。三八も素姓が素姓だから気があらい。もう一つには、万一お葉の口からその秘密を洩らされたら自分の首にも縄が付く一件ですから、油断は出来ない。これがもう少しごた付いていると、三八は度胸を据えて、お葉と銀六を殺してしまう覚悟であったそ
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