へ二人組の押込みがはいって、五十両ばかり取って行きました。番頭はなかなか落ち着いた男で、黙ってじっと見ていると、ゆうべも陽気がぽかぽかしたので、ひとりの奴が黒の覆面をぬいで、額《ひたい》の汗を拭いたり、頭を掻いたりした。すると、そいつの頭には髷が無かったと、こう云うのです」
「髷がなかった……」
「自分で切ったか、人に切られたか知らねえが、ともかくも髷が無かったと云うのです。髪切りのはやる時期でも、髪を切った押込みはめずらしい。それを眼じるしに御詮議を願いますと、番頭は訴えたそうです」
「実は午《ひる》過ぎに幸次郎が来て、ゆうべ浅草の代地のお園という囲い者の家へ、二人組の押込みがはいって、そいつらはお園の髷を切って行ったというのだ」
「やっぱり二人組ですかえ」と、亀吉は眼をひからせた。
「そうだ」と、半七はうなずいた。「だが、代地の二人組は女の髪を切って行った。金杉の二人組は自分の髪を切っている。時刻から考えると、浅草の奴が下谷へ廻ったと思われねえこともねえが、代地で盗んだ代物《しろもの》をどう始末したか。ほかにも同類があるのか、それとも別の奴らか。その鑑定はむずかしい」
「ちっとこん
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