。彼女もシマダと同じく神奈川に住んでいるとのことであるが、やはり其の居どころを知らないとヘンリーは云った。
 もうこの上に探索の仕様もないので、半七はヘンリーに別れてここを出た。出るとき庭を一巡すると、アグネスの死体はここに横たわっていたとヘンリーが指さして教えた。そこは庭の片隅で、大きい椿が緑の蔭を作っていた。半七はそこらを隈なく見まわしたが、別に眼につくような物もなかった。
「親分、妙な写真を見つけましたね」と、三五郎はあるきながら云った。
「これは蟹のお角という女だ」と、半七はふところから写真を出して見せた。「こいつがハリソンの家《うち》へ出入りしていようとは思わなかった。こんな奴が出這入りをして、素っ裸の写真なんぞを撮《と》らせるようじゃあ、まだほかに何をしているか判らねえ。この一件にはお角が係り合っているらしい。それからシマダという奴……。多分、島に田を書くのだろう。こいつも何かの係り合いがありそうだ。おれは死骸を見ねえから、確かなことは云えねえが、ひたいに犬という字を書かれて大川へほうり込まれたのは、この島田という奴かも知れねえ」
「ハリソンの犬をむごく殺した奴は誰でしょう
前へ 次へ
全45ページ中22ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング