であった。女は肌に一糸を着けない赤裸で、その右ひだりの胸と右ひだりの腕に蟹を彫っていた。
「おい、松。不思議なところで不思議な人に逢ったな」と、半七は小声で云った。
「むむう」と、松吉はうなるように溜め息をついていた。
四五十枚の写真全部をあらためたなかで、獲物《えもの》はシマダの写真と、女の裸体写真の二枚に過ぎなかったが、これは意外な獲物であると半七は思った。彼はヘンリーに頼んで、その二枚の写真を借りて来ることにした。
「その女、シマダさんの親類あります」と、ヘンリーは教えた。「わたくし、この人、ドロボウと間違えました。わたくし、悪いことしました」
「団子坂でこの女に逢いましたか」と、半七は訊いた。
「そうです、そうです。ダンゴ坂……。わたくし、その女、ドロボウと間違えました。日本の人、みな怒りました。ハリソンさん、アグネスさん、わたくし……みな殺されそうになりました」
ヘンリーの説明によれば、その女はシマダの紹介で、ハリソン方へ出入りすることになったのである。女のからだに珍らしい彫り物があるので、ハリソンは無理に頼んで撮影させて貰って、その報酬としてたくさんの金を彼女にあたえた
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