に相談してひと先ず玉太郎をお京の二階に預けることにしました。次郎吉は自分とお京との秘密を白雲堂に知られている弱味があるのと、元来が考え無しの人間ですから、うかうかと引き受けてしまったので、お京と次郎吉には別に悪い料簡もなかったようです。
 お京も男にたのまれて、玉太郎をあずかっては見たものの、子供のことですから家《うち》を恋しがって泣きはじめる。その始末に困って次郎吉のところへ相談に行く途中、泣く児をあやす為に河豚太鼓を買った。それが私たちの眼について、あとを尾《つ》けられることになったんです。お京が太鼓を買わなければ、私たちもうっかり見逃がしてしまうところでした」
「お福と次郎吉とは無関係なんですか」
「相変らず縁が繋がっているように思ったのは、わたくしの見込み違いで、お福とお京とを間違っていたんです。こういう勘違いでやり損じることがしばしばありますから、早呑み込みは出来ません。しかしこの一件に次郎吉が絡《から》んでいたというのも、自然の因縁でしょう。いや、自然といえば、白雲堂の屋根で猫が啼かなければ、二階を見上げない。二階を見なければ、あがって見る気にもならない。勿論、猫になんの料
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