士のお由をその相続人に直そうという策略です。ひとり娘のお袖がコロリで死んでくれれば申し分はないが、お誂え向きにも行かない。さりとて毒殺などをすれば、あとが面倒。そこで考えたのがかむろ蛇です。お袖親子がこのごろ水道端の氷川明神へ参詣に行くのを幸いに、まずかむろ蛇で嚇かして置いて、それからお袖を殺すことにする。殺す方法は毒蛇に咬ませる。かむろ蛇のことは世間でも知っているから、その祟りで蛇に殺されたと云えば疑う者もあるまい。親の次兵衛は迷信者だから、勿論うたがう筋はない。今の人から思えばちっと拵え過ぎた芝居のようですが、なにしろかむろ蛇の信じられていた時代ですから、それを利用してこんな芝居も考えられたんです。
 その頃、湯島天神の境内《けいだい》にも芝居小屋がありました。その芝居に出ている力三郎という子役を大吉が借りて来て、明神山にかむろ蛇の姿をあらわすという趣向……。なんと云っても芝居の子役ですから、こういう役には都合がよかったでしょう。殊にお袖親子が参詣の時には、一味徒党のお由も一緒に付いて行ったのですから、怪談がかりの芝居をうまく運んだと見えます。その芝居が図にあたって、娘は気病《きや
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