領でありながら、関口屋の身代《しんだい》を弟の次兵衛に取られてしまったので、内心甚だ面白くない。しかし次兵衛は元来いい人ですから、兄きはこれに娘を預けて置いて、万事よろしく頼んでいればいいのですが、それではどうも気が済まない。又その娘のお由というのが気の勝った女で、関口屋の娘とは従妹《いとこ》同士でありながら、表向きは奉公人同様に働かされているのが口惜《くや》しくてならない。そんなわけで、関口屋の方ではやがて相当の婿をさがして、行く末の面倒を見てやろうと思っているのに、次右衛門親子は内心|修羅《しゅら》を燃やして、なにか事あれかしと狙っているという始末、それでは無事に納まる筈がありません。どうしてもひと捫著《もんちゃく》おこるのは知れています。そこへかの大吉が煙草を仕入れるために、関口屋へ毎日出入りをする。男娼あがりで、男振りも優しく、口前もいいので、お由はいつか大吉と出来合ってしまったんです。うわべは柔らかでも肚《はら》のよくない大吉、これが次右衛門親子と共謀して、ひと芝居打つことになったんです」
「その芝居の筋立ては……」
「芝居の筋立ては、関口屋のひとり娘を殺してしまって、従妹同
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