りかむろ》の女の子だそうですが……」
「女の子か」と、半七は又かんがえた。「お由は蛇に祟られて頓死したというのだな。頓死にもいろいろあるが、どんな死に方をしたのだ」
「それにもいろいろの噂があるのですが、わっしがお千代という女中をだまして聞いたところじゃあ、まあ、こんな話です」
 関口屋ではお由、お千代、お熊という三人の女を使っているが、お由は仲働きで、他の二人は台所働きである。その晩はまだ残暑が強いので、裏口の空地にむかって雨戸を少し明けて、四畳半の女部屋に一つの蚊帳《かや》を吊って、三人が床をならべて寝た。いずれも若い同士であるから、正体もなく眠っていると、夜なかになってお由が急に騒ぎ出した。両側に寝ているお千代とお熊もおどろいて眼をさますと、お由は小声で「蛇……」と叫んだらしくきこえたので、二人はいよいよ驚いた。
 お千代もお熊も夢中で蚊帳をころげ出して、台所から行燈《あんどん》をつけて来ると、お由は寝床の上に蜿打《のたう》って苦しんでいる。二人はあわてて店の男たちを呼び起こすと、その騒ぎを聞きつけて、主人夫婦も起きて来た。小僧は出入りの医者を呼びに行った。
 何分にも夜なかの事
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