のような女をそのままにして置くことは出来ません。殊に小三津を殺した罪がありますから、後に死罪になりました」
「照之助は……」
「それにもお話があります。小三津の死骸は師匠の小三が引き取って、海光寺に葬りました。これは庄太の菩提寺です。その葬式の済んだ晩、照之助がそっと忍んで来て、小三津の新らしい墓の前で腹を切ろうとする処を、庄太に召し捕られました。もしやと思って張り込んでいたら、まんまと罠《わな》にかかったんです。文字吉が嫉妬をおこしたのも無理ではなく、小三津と照之助は関係があったのでした。照之助は年も若いし、兄のかたき討ちというところに情状酌量の点もあるので、遠島になりました。
腕を斬られた二人、そのうちで岩蔵は癒りましたが、角兵衛はとうとう死にました。碌々に手当てをしなかった岩蔵が助かり、外科医の手当てを受けた角兵衛が死ぬ。人間の命は判らないものです。角兵衛が死んだ以上、照之助の命もない筈ですが、前に云ったようなわけで、一等を減じられたのでした」
これで先ず一服と、老人はしずかに煙草を吸いはじめたが、私としてはまだ聞き逃がすことの出来ない大事の問題が残っている。それはかの唐人飴
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