うのです。なんの用で千太をたずねて来たと云うと、例の一件以来、大島町の方へも顔も見せねえので、どうしているのかと案じて来たと云うのです。いつまで押し問答をしていても果てしがねえから、一旦はそのまま放してやりましたが、あとでよくよく考えると、千太をたずねて来たと云うのは嘘で、実は千太の使に来たのじゃあねえかとも思うのですが……」
「そうすると、寅という奴は千太の居所《いどこ》を知っているわけだな」
「そうです。いっそ挙げてしまいましょうか」
「まあ、急《せ》くな」と、半七は制した。「迂濶に寅の野郎を引き挙げると、肝腎の千太が風をくらって、どこかへ飛ばねえとも限らねえ。まあ、当分はそのままにして置いて、出這入りを見張っていろ」
「ようがす」
 幸次郎は引き受けて帰った。半七はそれから牛込の堀田、京橋の須藤、深川の菅野の屋敷をまわって用人らに内密の面会を求めたが、或いは用人が留守だといい、或いは面会は出来ぬといい、この事は八丁堀役人の方へ申し入れてあるから、訊きたい事があるならばそれに訊いてくれ、当屋敷で直接の対談は断わると云い、いずれも申し合わせたように門前払いである。それでは取り付く島が
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