|番《つが》いだけが潰《つぶ》されずに残ったので、ともかくも品川まで持って行って、自分の家に飼って置くと、鶏の様子がだんだんに可怪《おか》しくなって、お六らをみると飛びかかりそうになるので、腹が立つやら気味が悪いやらで、かの八蔵に売ってしまったのです。いっそ殺したらよかったかも知れませんが、それを食うのも心持が悪し、殺して捨てるのも惜しいというわけで、捨て売りに売ったのが因果、大森の茶屋で不思議にめぐり逢って、飛んだ事になりました。お六もその鶏に見覚えがあるので、自分に飛びかかって来た時には、はっと思ったと云っていました。それにしても、安蔵の死ぬ五、六日前に買った鶏がどうして旧主人のかたきを討とうとしたのか。世間の人の知らないお六と勇二の秘密を、どうしてこの鶏が知っていたのか。唯なんとなくお六と勇二が憎いように思われたのか。それとも別に仔細があるのか。鶏の料簡《りょうけん》は誰にも判りませんから思い思いに判断するのほかはありませんが、恐らく死んだ亭主の魂が鶏に乗憑《のりうつ》ったのでしょうと、お六は恐ろしそうに云っていました。お六ばかりでなく、昔の人はとかくにそんなことを云いたがります
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