まいが、それはかならず内証にして置いてくれと、お粂は念を押して帰った。帰るときに、かれは更に念を押した。
「姉さん。二十一日にはきっとですよ。ぜひ五、六人さそってね」
二
半七は夕飯を早々にすませて、すぐに末広町の丸井の店をたずねた。丸のなかに井の字の暖簾《のれん》を染め出してあるので、普通に丸井と呼び慣わしているが、ほんとうは井沢屋というのである。表向きに乗り込んで詮議をしては却《かえ》って要領を得まいと思ったので、半七は番頭の長左衛門を表へよび出して小声で訊《き》いた。
「どうもゆうべは飛んだことだったね」
むかしから質屋はとかくに犯罪事件にかかり合いの多い商売であるから、丸井の番頭は半七の顔をよく識《し》っていた。
「もうお耳にはいりましたか」と、彼はすこし眉をよせながら云った。
「むむ、すこし聞き込んだことがある。そこで、番頭さん。あいつらのきまり文句で、これを他言すると仕返しに来るの、火をつけて焼き払うのというが、そんな心配は決してねえから、何もかも正直に云ってくれねえじゃあ困る。なまじい隠し立てをして、あとで飛んだ引き合いを食うようなことがあると、却って店
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