までは知っている者がねえので困りました」と、三五郎は小鬢をかいた。
「ロイドと一緒に岩亀に入りびたっていたようじゃあ、勝蔵にも馴染《なじみ》の女があるだろうな」と、半七は云った。
「あります、あります。小秀という女で、勝蔵の野郎も大分《だいぶ》のぼせていたらしいんです。じゃあ、これから岩亀へ出張って行って、その女を調べてみましょうか。ひょっとすると、あいつの行く先を知っているかも知れません」
「いや、待て。むやみに騒いじゃあいけねえ」と、半七はさえぎった。「そういうわけなら女を調べるまでもねえ。ひょっとすると、当人がまた舞い戻っているかも知れねえ。迂闊《うかつ》に手をつけて感付かれちゃあ玉なしだ。まっ昼間おれ達がどやどや押し掛けて行くのはまずい。まあ、日の暮れるまで気長に待っていて、客の振りをして岩亀へ行って見ようじゃあねえか」
「それがようがすな。ここまで漕ぎ付けりゃあ、そんなに急ぐことはねえ」と、松吉も云った。
「きょうはゆっくり浜見物でもして、日が暮れてから仕事にかかるんですね」
そこらをひとわたり見物して、三人は夕方に帰って来た。
「どうします。真っ直ぐにあがりますか」と、案
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