けた時には、それほどの蛇もいなかったそうです。それでもたくさんの蛇がその髪の毛を取りまいて、うず高くなるほどに盛りあがっていたのは、みんなも見たということですから、まあ間違いはないでしょう。そこで、その娘とそれを殺した奴との探索ですが、これはすぐに判りまして、二日ほど経ってから、おもよとお大という二人の若い女を渋谷で引き挙げました。殺されたのはおとくという女で、おもよとお大がその下手人《げしゅにん》でした」
風はひとしきり吹き過ぎて、風鈴の音はまた鎮まった。老人は檐《のき》の方へ眼をやって、「又あつくなる」と、独り言のように云った。
「暑くなりそうですね」と、わたしも云った。
「ええ、降りそこなってしまいましたから……。このあとはきっと蒸《む》します。かないません」
「そこで、その女たちは何者です。まったく武家の娘なんですか」
「なに、みんな小商人《こあきんど》や職人の娘で、おとくは十四五の小娘につくっていましたが、実はかぞえ年の十七で、あとの二人も同じ年頃でした。こいつらは今日《こんにち》でいう不良少女で、肩揚げのおりないうちに自分たちの親の家を飛び出して、同気相求むる三人が一つ仲
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