な筋道なのだが、どうだろう、何とかなるめえか。心柄とは云いながら、本人はまず切腹、連れのものも御役御免か、謹慎申し付けられるか、なにしろ大勢の難儀にもなることだ。考えてみれば可哀そうだからな」
「そうでございますよ。御鷹匠もこの頃あんまり羽《はね》を伸ばし過ぎるからね」と、半七は云った。「併しそれはまあそれにして、出来たことは何とかしてやらざあなりますまい。まったく可哀そうですからね」
「なんとかなるだろうか」
「生き物ですからね」と、半七は首をかしげていた。
 おなじ生き物のうちでも飛ぶ鳥と来ては最も始末がわるい。まして鷹のような素捷《すばや》い鳥はどこへ飛んで行ってしまったか判らない。それを探し出すというのは全く困難な仕事であると、さすがの半七も胸をかかえた。
「まあ、なんとか工夫して見ましょう」
「工夫してくれ。光井金之助の叔父も涙をこぼして頼んで行ったのだからな」
「かしこまりました」
 ともかくも受け合って、半七は善兵衛の屋敷を出たが、どう考えてもこれは難儀の役目であった。雲をつかむ尋ね物というが、これは空を飛ぶ尋ねものである。神田へ帰る途中も彼はいろいろに考えた。
「家《う
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