と云っているうちに、鳥の姿はもう見えなくなった。その騒ぎを聞きつけて伊四郎も又作もびっくりして駈けつけたが、今更どうする術《すべ》もないので、三人は顔の色を変えて、しばらくは唯ぼんやりと突っ立っていた。まして其の本人の金之助は殆ど生きている心持はなかった。それに係り合いのお八重もどんなお咎めをうけるかとふるえ上がった。
なにしろ、これは内密にして置いて、なんとかして彼《か》のお鷹を探し出すよりほかはないと、年嵩《としかさ》の伊四郎がまず云い出した。実際それよりほかには知恵も工夫もないので、二人もそれに同意して、丸屋の者にも固く口止めをして置いて、早々に千駄木の御鷹所《おたかじょ》へ帰って来た。当人の金之助は勿論であるが、連れ立っていた伊四郎、又作も何等かのお咎めは免かれないので、その親類一門も俄かにうろたえ騒いで、寄りあつまっていろいろ評議の果てが、これは内密に町方《まちかた》の手を借りて詮議するのが一番近道であるらしいということに決定して、金之助の叔父の弥左衛門が取りあえず山崎善兵衛のところへ駈けつけたのであった。
この事情をくわしく話した上、善兵衛は一と息ついた。
「まあ、そん
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