一二の若い者であるので、丸屋の方でも心得ていて給仕としてお八重、お玉、お北という三人の抱妓《かかえ》を出した。そのなかで一番|容貌《きりょう》のいいお八重が金之助のそばに付いていることになった。金之助も三人の鷹匠のなかでは一番の年下で、男振りも悪くない、おとなしやかな男であった。普通の客とは違うので、女達もせいぜい注意して勤めていたが、そのなかでもお八重は特別に気をつけて若い鷹匠を歓待した。御鷹匠といえば一概に恐ろしいもののように考えていたお八重は、案外に初心《うぶ》でおとなしい金之助を憎からず思ったらしい。こうして、仲よく一夜を明かしたが、朝になって三人が帰り支度をしている間に、お八重と金之助とが何かふざけ出したらしく、女は男を打《ぶ》ったり叩いたりしてきゃっきゃっと笑った。いつもの云いがかりとは違って、それがほんとうに大切の鷹を驚かしたらしく、俄かに羽搏《はばた》きをあらくした鷹はその緒を振り切って飛び起《た》った。丸屋は宿の山側にある家《うち》で、あいにくお八重の座敷の障子が明け放されていたので、鷹はそのまま表へ飛び去ってしまった。
不意の出来事におどろかされて、二人はあれあれ
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