もべらべらとしゃべってしまった。
「まあ、こういう訳なんでございますから、どうかその思召《おぼしめ》しで……」と、半七は云った。
「なにしろ奥様も御承知のことですから、あまり荒立てると又面倒でございましょう。なんとかあなたのお取り計らいで、そこを円く済みますように……」
「いや、いろいろ有難うござった」と、角右衛門は夢の醒めたようにほっ[#「ほっ」に傍点]と息をついた。「それで何もかもわかりました。就いてはあとの始末でござるが、どういうふうに取り計らうのが一番|穏便《おんびん》でござろうかな」
相談をかけられて、槇原もかんがえた。
「さあ、やはり神隠しでしょうかな」
この秘密を主人の耳に入れるのは良くない。どこまでも奥方の計画を成就させて、神隠しとして万事をあいまいのうちに葬ってしまう方がむしろ御家の為であろうと、槇原は注意した。
「成程」
角右衛門は厚く礼を述べて帰った。それから三日ほど経って、かれは相当の礼物をたずさえて槇原の屋敷へたずね来て、若殿大三郎殿は無事に戻られたと報告した。
「では、杉野の主人は結局なんにも知らずにしまったのですか」と、わたしは訊いた。
「やはり神
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